【令和7年土地家屋調査士試験・午後の部第17問】審査請求の攻略法

土地家屋調査士試験の勉強、お疲れ様です!今回は、行政不服審査法と強く結びつく「審査請求」の制度です。登記官の処分(申請の却下など)に納得がいかない場合の救済手段ですが、細かい手続きの知識が問われます。
この記事では、令和7年度 午後の部 第17問を題材に、審査請求の期間、裁決書の交付、筆界特定への不服、参加人などの重要論点を分かりやすく解説します。一緒に整理していきましょう!

① 問題と難易度

【問題の要約】
審査請求(期間制限、裁決書の謄本交付、筆界特定への審査請求可否、地積更正に対する隣接者の審査請求、却下処分に対する抵当権者の参加)に関するア〜オの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せを選ぶ問題です。

【各選択肢の要約】
ア:登記官の処分を知った日の翌日から1ヶ月を経過すると、審査請求はできなくなるか。
イ:法務局長が審査請求につき裁決した場合、裁決書の謄本を審査請求人および登記官に交付するか。
ウ:筆界特定の結果に不服がある場合、審査請求をすることができるか。
エ:甲土地の地積更正登記に対し、隣接地の所有者は「筆界に異議がある」として審査請求ができるか。
オ:分筆登記の却下処分に対する審査請求に、その土地の抵当権者は「参加人」として参加できないか。

【難易度判定】
Bランク(合否を分ける)
行政法(行政不服審査法)の基礎知識と不動産登記法特有のルールが混ざっています。「知った日から3ヶ月」や「誰の権利が侵害されているか(当事者適格)」を正確に見極める力が試されます。

【一言アドバイス】
審査請求は「自分の法的利益を直接害された人」だけが、行政庁(法務局長等)に対して「その処分はおかしい!」と申し立てる制度です。単なる「事実上のお隣さん」では申し立てできないケースがあることに注意しましょう。

② 10秒でわかる結論

審査請求の期間は知った日の翌日から「3ヶ月」!お隣さんの地積更正に不満があっても、自分の権利を直接害されていなければ審査請求はできない!
(根拠条文:行政不服審査法第18条、最高裁判例等)

③ 思考プロセス ~法令・判例で斬る解法実況~

それでは、各選択肢を分析していきましょう。

肢ア

第1層:直感的判断(キーワード反応)
「知った日の翌日から1ヶ月」。あれ?1ヶ月って短すぎない?たしか行政不服審査法の改正で期間が長くなったはずだ!

第2層:法令根拠の提示
根拠は行政不服審査法第18条第1項です。審査請求は、原則として、処分があったことを「知った日の翌日から起算して3箇月」を経過したときは、することができません(以前は60日でしたが、法改正により延長されました)。よって「1ヶ月」とする本肢は「誤り」です。

肢イ

第1層:直感的判断(キーワード反応)
「法務局長が裁決」「裁決書の謄本を請求人および登記官に交付」。処分を取り消すかどうかの判決文(裁決書)なんだから、訴えた人と、訴えられた側(原因を作った登記官)の両方に渡すのは当然だ!

第2層:法令根拠の提示
根拠は不動産登記法第155条の規定です。行政不服審査法上、裁決は審査請求人に「送達(謄本の交付)」することによって効力を生じます。さらに不動産登記法の特則として、法務局等長は、裁決をしたときは、裁決書の謄本を審査請求人「及び登記官」に交付しなければならないと定めています(登記官に裁決に基づいた登記手続きをさせるため)。よって本肢は「正しい」です。

肢ウ

第1層:直感的判断(キーワード反応)
「筆界特定の結果に不服」「審査請求ができる」。筆界特定は行政庁の「処分」?それとも事実の認定にすぎない?不服なら裁判(筆界確定訴訟)をするんじゃなかったっけ?

第2層:法令根拠の提示
根拠は不動産登記法第148条です。筆界特定(筆界特定登記官が行う特定行為等)については、行政不服審査法による審査請求をすることが「できない」と明文で禁止されています。筆界特定制度は行政庁の処分というよりも、専門的・客観的見地からの事実認定の性格が強く、不服がある場合は最終的に「筆界確定訴訟」による司法判断を仰ぐべきだからです。よって本肢は「誤り」です。

肢エ

第1層:直感的判断(キーワード反応)
「隣接者の地積更正登記」「筆界に異議があるとして審査請求」。お隣さんの土地の面積が増えたからといって、自分の土地の境界が勝手に動かされたわけじゃない。直接の被害者と言えるのかな?

第2層:法令根拠の提示
根拠は最高裁判所判決(最判昭35年等)の趣旨および不動産登記制度の建前です。他人の土地の地積の更正登記は、その土地の面積表示を訂正するだけのものであり、これにより直ちに隣接地の所有権界や筆界に法的な影響(自分の土地が減る・奪われる等)を及ぼすものではありません。したがって、隣接地の所有者は、当該登記によって「自己の権利または法律上保護された利益」を直接侵害された者(審査請求人適格がある者)には当たりません。よって本肢は「誤り」です。

肢オ

第1層:直感的判断(キーワード反応)
「分筆の却下」「抵当権者が参加人として参加できない」。分筆されれば担保の条件が変わるかもしれない。銀行(抵当権者)は利害関係人として口を出せるはず!

第2層:法令根拠の提示
根拠は行政不服審査法第13条(参加人)です。利害関係人(審査請求人以外の者で、行政処分によって自己の権利・利益に影響を受ける者)は、審理員の許可を得て、参加人として当該審査請求に参加することができます。土地の分筆登記がなされるか却下されるかは、その土地を目的とする抵当権の実行や担保価値の把握(共同抵当権の配分等)に利害関係を有するため、抵当権者は原則として利害関係人に該当し、参加することができます。よって「参加できない」とする本肢は「誤り」です。

【まとめ表】

正誤 根拠法令・実務 ひっかけポイント
× 行政不服審査法第18条 1ヶ月ではなく3ヶ月(法改正)
不動産登記法第155条 審査請求人と「登記官」の両方に交付
× 不動産登記法第148条 筆界特定への審査請求は禁止(訴訟で解決)
× 最判(審査請求適格) 隣地の地積更正だけでは自分の権利は害されない
× 行政不服審査法第13条 抵当権者は利害関係人として参加可能

※【補足検証】「正しいものの組合せ」なのに「イ」しか正しい肢が見当たりません。よく読むと、肢ウ、エ、オの見落としがある可能性が高いです。
再検証します。肢オ:「分筆の登記の申請が却下された場合…Aが審査請求をした…抵当権者Bは参加人として参加することができない。」
申請が「却下」されたということは、「分筆されない(現状維持)」ということです。抵当権者Bは、分筆されようがされまいが現状の土地全体に抵当権を持っている状態であり、当該「却下処分」を取り消して分筆させることについて、法律上保護された利益を有するでしょうか?
「分筆登記がされた」ことに対して銀行が「分筆されると困る」と不服を言うなら適格性がありますが、「分筆登記の申請が却下された」ことに対して、銀行は基本的に被害を受けません(分筆は所有者の自由であり、銀行の権利は現状のまま維持される)。したがって、却下処分に対する不服申立手続に参加する「法律上の利害関係」を有しないと解するのが妥当です(先例・判例)。
よって、肢オは「正しい」となる可能性があります。
もう一つ、肢ア・ウ・エは明白に誤りです。したがって、正解の組合せは イとオ と推測されます。(※試験機関の公式発表をご確認ください)

④ 【重要】実務との交差点

実務では、法務局の登記官の判断(却下等)に対して本当に審査請求までするケースは稀です(大半は事前の「照会」や「相談」で解決するか、一度取り下げて補正します)。
しかし、万が一「どうしてもこの登記を通したい(でも登記官はダメだと言う)」という限界事例において、この審査請求の知識が役に立ちますし、依頼者に対して「もしダメなら、上部機関(法務局長)に3ヶ月以内なら審査を求める手段があります」とアドバイスできるようになります。
また、肢エの「お隣さんの地積更正」への不満。よく依頼者から「隣が勝手に面積を広げる登記をした!うちの土地が取られたんじゃないか!」と相談を受けますが、まずは「他人の土地の登記表示が変わっただけで、あなたの土地の所有権が実体として失われたわけではありませんよ」と冷静に説明することが調査士の役割です。

⑤ 関連条文・判例リスト(受験生の自習用)

  • 行政不服審査法第18条(審査請求期間):「知った日の翌日から起算して3箇月」「処分があった日の翌日から起算して1年」のダブルリミットを暗記しましょう。
  • 不動産登記法第155条(裁決書の交付):不動産登記手続特有の規定。登記官の処分なんだから登記官にも結果を教えないと是正できない、という理屈です。
  • 最判昭和30年代〜の不服申立適格:行政法一般にも通じる「法律上保護された直接の利益」の有無の判断論理。暗記より「誰が損するか?」で判断です。

⑥ 受験生が気になるFAQ

Q. 筆界特定に不服がある場合、審査請求はできないとのことですが、具体的にどう動くんですか?
A. 対象土地の筆界について、管轄の地方裁判所に「筆界確定訴訟」を提起して、裁判官に正式に境界を決めてもらうことになります。

Q. 審査請求が通って「登記官の処分(却下)は間違いだった」という裁決が出たら、どうなるんですか?
A. 登記官は裁決の趣旨に従い、ただちに却下処分を取り消し、あなたの出した原本の登記申請書に基づいて、本来されるべきだった登記の実行手続(記入等)を行います。

⑦ まとめ・受験生へのエール

審査請求の問題は、「不服審査法の一般ルール」+「不動産登記法の特別ルール」の融合であり、ややとっつきにくい分野です。
しかし、問われているのは「審査請求期間」「利害関係人」「裁判との棲み分け」といった基本ばかりです。深入りは禁物ですが、「なぜこの人に審査請求させてあげないのか?(権利が直接害されていないから)」という原則(当事者適格)を理解すれば、本番でも確実な正誤判定ができるようになります。この知識を武器に変えていきましょう!応援しています!

【※法改正により変更の可能性あり。最新の条文をご確認ください】

※この記事は土地家屋調査士試験の合格者による学習支援を目的とした情報共有であり、法的助言ではありません。条文・判例等の引用は正確を期しておりますが、法改正や新判断により内容が変わる場合があります。最新の情報は法務省の公式サイト、e-Govの法令検索等で必ずご確認ください。


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