土地家屋調査士試験の勉強、お疲れ様です!不動産登記法の「地図の訂正」は、実務に出た直後から頻繁に直面するリアルな手続きの一つです。「なんでこの図面、現地の形と全然違うの!?」と法務局で頭を抱えるのは、調査士あるあるです。
この記事では、令和7年度 午後の部 第4問を題材に、根拠となる条文・不動産登記規則を示しながら分かりやすく解説します。実務の場面を想像しながら読んでみてくださいね!
① 問題と難易度
【問題の要約】
地図の訂正(申出義務の有無、職権訂正、地積に錯誤がない場合の訂正可否、隣接地の連鎖訂正、共有者の申出可否)に関するア〜オの記述のうち、誤っているものの組合せを選ぶ問題です。
【各選択肢の要約】
ア:地図の誤りを発見した所有者は、1月以内に地図訂正の申出をしなければならないか。
イ:登記官は、申出がなくても職権で地図の訂正をすることができるか。
ウ:地積に錯誤が「ない」場合は、地図訂正の申出をすることはできないか。
エ:他の土地の区画も連動して訂正される場合、申出に基づいて地図訂正はできないか。
オ:共有名義の土地の場合、共有者の一人から地図訂正の申出ができるか。
【難易度判定】
Aランク(必答)
不動産登記法第14条地図や地図に準ずる図面(公図)に関する超基本問題です。実務の生命線とも言える規定ばかりなので、絶対に自信を持って正解したいところです。
【一言アドバイス】
「地図の訂正」はあくまで「表示の誤りを直す」行為であり、「登記申請」のような厳しい報告義務や共同申請の縛りとは少し毛色が違う、という感覚を持ちましょう。
② 10秒でわかる結論
地図訂正には「1月以内の義務」はありません。また、地積が正しいままでも図面の形だけ直すことは往々にしてあります。
(根拠条文:不動産登記法第14条、不動産登記規則第16条等)
③ 思考プロセス ~法令・判例で斬る解法実況~
それでは、各選択肢を分析していきましょう。
肢ア
第1層:直感的判断(キーワード反応)
「1月以内に地図訂正の申出をしなければならない」という義務規定に反応します。「建物の新築や地目の変更なら1ヶ月の義務があるけど、地図の訂正に義務なんてあったっけ?」と疑いを持てれば完璧です。
第2層:法令根拠の提示
根拠は不動産登記規則第16条第3項等です。土地の表題部所有者等は、地図等に誤りがあることを発見したときは、その訂正の「申出」をすることができるとされています(権利であって義務ではありません)。表題登記(法第36条)や地目変更登記(法第37条)には1月以内の申請義務と過料の制裁がありますが、地図訂正の「申出」には申請義務期間はありません。よって本肢は「誤り」です。
肢イ
第1層:直感的判断(キーワード反応)
「申出がなくても職権で訂正」というフレーズ。登記官は国の帳簿(地図)の管理者だから、間違いがあれば当然直せるはずだ、と判断します。
第2層:法令根拠の提示
根拠は不動産登記規則第16条第2項です。「登記官は、地図等に表示された土地の区画等…に誤りがあることを発見したときは、職権で、地図等の訂正をすることができる」と規定されています。もちろん実務上は、境界確認等のために所有者等からの申出(や上申)を端緒に行われることが多いですが、法律上は職権で訂正可能です。よって本肢は「正しい」です。
肢ウ
第1層:直感的判断(キーワード反応)
「地積に錯誤がない場合」は訂正の申出が「できない」という強い否定です。現場では「面積は合ってるけど、公図の形がビミョーに違う」なんてしょっちゅうあるぞ、と実務のイメージで切りたい肢です。
第2層:法令根拠の提示
根拠は不動産登記規則第16条第3項の解釈および先例(昭和43年7月8日民甲第1907号回答等)です。地図等の訂正は、単に「地図上の区画線(形状)」の誤りを直す場合と、「地図の訂正に伴って地積更正登記が必要になる(面積も間違っていた)」場合があります。面積が合っていても、形状だけが間違っていれば当然に申出は可能です。よって「申出をすることはできない」とする本肢は「誤り」です。
肢エ
第1層:直感的判断(キーワード反応)
「申出に係る土地以外の土地(隣接地)」も訂正される場合に関するルールです。
第2層:法令根拠の提示
根拠は不動産登記規則第16条第4項です。「申出に基づき地図等の訂正をすることによって申出に係る土地以外の土地の区画等が訂正されることとなるときは、登記官は、申出に基づき地図等の訂正をすることができない。」と規定されています。
なぜか?もし申出だけで他の土地まで勝手に訂正されてしまうと、隣接地の所有者に不測の損害を与えるからです。こういった隣接地をも巻き込む大掛かりな訂正は、登記官が十分な調査(地図作成作業等)を行った上で「職権」で行うべき(または全員から申出等を集めるべき)とされています。よって本肢は「正しい」です。
肢オ
第1層:直感的判断(キーワード反応)
「共有者の一人からの申出」。これは民法の「保存行為」とリンクする論点です。
第2層:法令根拠の提示
根拠は民法第252条第5項(保存行為)の応用、および不動産登記の先例です。地図の訂正申出は、登記名義人の権利に直接変動をもたらす「登記の申請」ではなく、単なる事実状態を本来の正しい姿に戻す「保存行為」に準ずるものと解されています。そのため、共有者全員でなくても、共有者の「一人から」申し出ることができます。よって本肢は「正しい」です。
【まとめ表】
| 肢 | 正誤 | 根拠法令 | 判例・先例 | ひっかけポイント |
|---|---|---|---|---|
| ア | × | 不動産登記規則第16条第3項 | なし | 表題登記等(1月以内)との申請義務の混同 |
| イ | ○ | 不動産登記規則第16条第2項 | なし | 職権訂正の可否 |
| ウ | × | 不動産登記規則第16条第3項等 | 先例昭和43等 | 地積錯誤の有無と地図訂正の関係 |
| エ | ○ | 不動産登記規則第16条第4項 | なし | 隣接地の区画への影響(職権の領域) |
| オ | ○ | 民法第252条(保存行為の類推) | なし | 共有者単独での申出の可否 |
→ 正解は 1(アとウが誤り) です。
④ 【重要】実務との交差点
地図(公図)の訂正は、土地家屋調査士の腕の見せ所とも言えるディープな実務です。
例えば、明治時代に作られた「旧土地台帳附属地図(いわゆる公図)」は、現地を測量してみると「道が1本足りない」「隣の畑と形が入れ替わっている」ということが日常茶飯事です。この時、地積の手続き(地積更正登記)とは切り離して、「とりあえず公図の線引きだけ、現地の正しい形に直してほしい!」と法務局に申し出るのが「地図訂正の申出」です。
肢オで見たように、共有の土地でも代表者一人が動けば申し出ることができるのは、実務上とても助かります(相続で共有者が数十人に膨れ上がっていても、一人の印鑑で手続きを進められるため)。試験の知識は、そのまま実務の「使える武器」に直結しますよ!
⑤ 関連条文・判例リスト(受験生の自習用)
- 不動産登記法第14条第1項・第4項(地図等):法14条地図と、地図に準ずる図面(公図)の違いの根拠。
- 不動産登記規則第16条(地図等の訂正):地図訂正の実体ルールが詰まった超重要条文。「誰が」「職権か申出か」「隣接地への影響」をマーカーで整理必須です。
- 不動産登記法第36条等(申請義務):新築・地目変更・地積変更などに伴う1月以内の申請義務と、地図訂正の「申出(義務なし)」を対比して覚えましょう。
⑥ 受験生が気になるFAQ
Q. 地図訂正の「申出」と「申請」って言葉遊びのようでよくわかりません。
A.
厳密な違いがあります!「申請」は、国民が権利として登記官に処理を求めるもので、登記官は要件を満たせば必ず登記しなければなりません。一方「申出」は、「ここ間違ってますよ」とお知らせするだけの行為(職権発動を促す行為)です。そのため、登記官が「いや、これは訂正するほどの明確な証拠がない」と判断すれば、そのまま放置されることもあります。
Q. 地積更正登記と地図訂正の申出は一緒にやるのですか?
A. 実務では「地図訂正の申出」と「地積更正登記の申請」をセットで(連件で)法務局に提出することが非常に多いです。面積も形も両方間違っていた、というケースが大半だからです。
Q. この分野は記述式にも絡みますか?
A. はい!記述式の注意書きで「甲土地の地積に錯誤はないが、公図の形状が誤っているものとする」という一文があったら、すかさず「おっ、地図訂正の申出書の添付が必要だな!」と反応できるようにしておきましょう。
⑦ まとめ・受験生へのエール
地図の訂正は、法第14条や規則16条の条文構造を理解していれば、怖いものなしの分野です。
「もし自分が新人の調査士で、この公図の誤りを直そうとしたらどういう手続きになるだろう?」と、実務家気取りで楽しみながら学習を進めてみてください。実際の法務局の窓口で、この知識を使って登記官と渡り合う日が待ち遠しいですね!応援しています!
【※法改正により変更の可能性あり。最新の条文をご確認ください】
※この記事は土地家屋調査士試験の合格者による学習支援を目的とした情報共有であり、法的助言ではありません。条文・判例の引用は正確を期しておりますが、法改正や新判例により内容が変わる場合があります。最新の情報は法務省の公式サイト、e-Govの法令検索、および裁判所の判例検索で必ずご確認ください。

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