令和6年度土地家屋調査士試験の過去問を分析してみた感想。

令和6年度の土地家屋調査士試験は合格者数も例年より多く、難易度的には解きやすかった問題が多かったように思います。

法務省でも過去問が公開されてますので、それを見ながら個人的に分析してみた感想を書いてみたいと思いますので、少しでも参考になれば幸いです。

受験生にどんな知識が問われているのかをまとめた感じですが、個人的な感想なので、あくまで参考程度にしてください。

第1問(行為能力)

:成年後見人の取消権は広いが、日用品の購入など日常行為は例外として取消できない。 → 成年後見制度の“取消可能範囲”を正確に理解できているかを確認する肢。

:未成年者は、法定代理人の同意なく契約したとき、原則として取消権を単独で行使できる。 → 取消権の「誰が行使するか」という主体まで理解しているかを見る肢。

:未成年者が「取り消せると知って契約したか」は関係なく、取消権は失われない。 → 取消権が“知識の有無”に左右されない制度構造を確認する肢。

:日用品の購入は成年被後見人でも有効で、後見人でも原則取り消せない。 → 日常生活行為という“例外”を見抜けるかがポイントの肢。

:被保佐人の同意欠缺による取消しでは、相手方が保佐人へ追認の催告ができる。 → 制限行為能力者制度が「本人保護+相手方保護」の両面で成り立つことを問う肢。


第2問(不動産売買・登記)

:二重譲渡では、後の買主が悪意でも、先の買主が登記を備えなければ対抗できない。 → 「登記=対抗要件」という不動産法の大原則を押さえているかを試す肢。

:売主が抵当権を設定し実行されても、買主が登記をしていなければ買受人に対抗できない。 → 抵当権設定→実行の流れを踏まえて、登記の優先関係を理解しているかを問う肢。

:B→Cへの再売買でも、登記がなければ原所有者Aに対抗できない。 → 売買の連続と登記の関係を“自分で図に描けるか”を確認する肢。

:売主の死亡・相続があっても、買主が登記をしていなければ相続人に対抗できない。 → 登記未了のリスクが“相続場面でも同じ”であることを理解しているかを見る肢。

:登記がない買主は、無権原占有者に対しても明渡請求できない。 → 登記が権利行使の前提となる仕組みを理解できているかを確認する肢。


第3問(代襲相続)

:実子が死亡しても、その養子は代襲相続人にならない。 → 代襲相続の“血族関係”の範囲を正しく理解しているかを問う肢。

:胎児であっても、出生後に代襲相続人になり得る。 → 胎児に相続が認められる特則を理解しているかを見る肢。

:廃除された子の子(孫)は代襲相続できる。 → 廃除と相続放棄の違いを含む“制度の影響範囲”を確認する肢。

:配偶者の連れ子(血のつながりなし)は代襲相続できない。 → 法定相続における“血族要件”を理解しているかを見る肢。

:祖父母のさらに上の尊属が生きていても代襲しない。 → 代襲相続が認められる範囲が“直系卑属に限定される”ことを理解させる肢。

第4問(表題登記の添付情報)—肢ごとに確認したいポイント

:住民票コードによって住所証明が省略できるかを問う内容。
→ 住所証明の基本と、例外扱いへの理解があるかを確認する肢。

:相続人が表題登記を申請するとき、法定相続情報一覧図だけで足りるかを問う。
→ 相続と住所証明の関係を正確に把握しているかを見る肢。

:共有地を敷地とする建物表題登記で、誰が所有権証明を出すべきかを問う。
→ 共有持分と証明の要否など、共有関係の実務理解を確認する肢。

:法人が所有者の建物表題登記で、会社法人等番号が必須かどうかを問う。
→ 法人登記の添付情報に関する基本理解をチェックする肢。

:地上権付き区分建物で、規約の定めの証明が必要かどうかを問う。
→ 区分建物特有の添付情報や敷地利用権の扱いに踏み込んだ理解を確認する肢。


第5問(調査士報告方式と添付情報)—肢ごとに確認したいポイント

:分筆後の地役権の範囲を示す書面が省略可能かを問う。
→ 分筆×地役権という複合事案で、添付情報の扱いを理解しているかを確認。

:滅失登記の代理申請で、委任状が報告方式の対象になるかを問う。
→ 委任状の扱いと、原本提示の省略範囲を理解しているかを見る肢。

:表題登記で工事完了引渡証明書が報告方式対象かを問う。
→ 所有権証明情報ごとの扱いの違いを理解しているかを確認。

:表題部所有者更正登記で承諾書が必要かどうかを問う。
→ 更正登記の添付情報の基礎を押さえているかを見る肢。

:合体建物の抵当権者承諾書が報告方式の対象かを問う。
→ 複雑な合体建物事案における添付書類の取り扱いを理解しているかを確認。


第6問(地図・地積・訂正)—肢ごとに確認したいポイント

:基準点がない場合に地物を測量基準にできるかを問う。
→ 測量の基本と例外的な基準設定の知識を問う肢。

:隣接2筆の区画誤りがある場合に、1件の申出で足りるかを問う。
→ 地図訂正の単位や管轄の理解を確認する肢。

:旧図面が閉鎖されても保存期間がどう扱われるかを問う内容。
→ 地図と準ずる図面の保存制度への理解を確認する肢。

:閉鎖図面で誤りが確認できる場合の証明方法を問う。
→ 過去の図面を利用した訂正申出の実務理解を見ている肢。

:誤った地積測量図で登記がされた後の訂正可否を問う。
→ 分筆・登記・誤り訂正の流れを理解できているかを確認する肢。


全体として、第4〜第6問は「条文+実務運用」の両方を理解しているかを確認する内容。表示登記・地図訂正・添付情報といった調査士実務の核となる部分を体系的に押さえているかが問われている。

第7問(地積に関する更正の登記)

  • :登記簿の地積と実測がズレていても、公簿上の差が「ごく小さい = 公差の範囲内」として放置されがちだが、たとえ差が小さくても更正登記を申請できるか、という視点。
    → “地積更正登記=実測と登記の差があれば是とする制度”という基本原理を押さえているかを問う肢。
  • :地殻変動や自然災害などで土地の一部が海没などにより実質的に失われた場合、地積減少として更正登記できるかを問う肢。
    → 地積変更の原因が「自然による現況変化」であっても、更正の対象となり得るか、という実務的な観点を理解しているかを確認。
  • :土地に抵当権などの権利登記があっても、地積を減少させる更正登記は、抵当権者の承諾なしにできるかどうかを問う肢。
    → 地積更正と担保権の関係、抵当権者の利害保護との整合性について意識できるかをチェック。
  • :地積が増加するような更正のとき、隣接土地所有者の承諾など“境界や隣地関係”の確認・同意が必要かを問う肢。
    → 境界・隣地関係を含めた「地積変更=単に面積の問題ではない」ことを理解しているかを見る肢。
  • :登記簿の地積に誤りがあった土地を取得した者が、その取得日から一定期間(例:1か月以内)で更正登記を申請すべき義務があるかを問う肢。
    → 所得後の更正手続き義務 — つまり「所有権取得 → 変更があるなら速やかに登記すべき」という制度理解を問いただす肢。

→ 全体として、第7問は、「実測と登記のズレ」「自然変動」「担保権の有無」「義務か任意か」など、多様な事情での地積更正の可否を正しく理解しているかを確認する設問。


第8問(土地の分筆の登記)

  • :地役権が設定されている土地を分筆し、その際に地役権を消滅させるなら、法人の申請時に印鑑証明の省略が認められるかを問う肢。
    → 分筆と地役権の関係、法人申請時の添付情報や要件を理解しているかを確認する肢。
  • :同じ登記所管内でも、別の土地同時に分筆申請できるか — 分筆の単位と申請情報の取り扱いを問う肢。
    → 分筆登記のルール(複数筆の扱い)と申請単位を正確に把握しているかを見る肢。
  • :相続で土地を取得した相続人が、法定相続情報一覧図を添付するだけで分筆登記できるかを問う肢。
    → 相続取得後の登記申請時に必要な書類や確認要件を理解しているかを確認する肢。
  • :地方公共団体が代位して分筆登記を嘱託する場合、登録免許税が課されないかを問う肢。
    → 分筆登記の税務上の例外扱いを含む制度理解の有無を問う肢。
  • :共有者全員の同意が必要か — 共有持分者全員を申請人としなければならないかを問う肢。
    → 共有土地の分筆での手続き要件、共有者全員の協力義務を押さえているかを見る肢。

→ 第8問は、分筆登記における 所有形態(共有/法人/相続)添付情報・税務申請の単位と要件といった、実務でよく問題になりやすい論点を網羅的に確認する構成。


第9問(合筆の登記)

  • :持分比率が異なる共有者間での合筆の可否を問う肢。
    → 合筆登記での共有持分の整合性と、その分筆前の登記内容との関係を理解しているかを確認。
  • :登記記録上の地目は同じだが、現況の地目が異なる場合でも合筆可能かを問う肢。
    → 表示変更と合筆の関係、つまり「地目変更を伴う場合の合筆可能性」の制度理解をチェック。
  • :地方公共団体が登記嘱託する場合、登記識別情報(登記済証など)が不要かどうかを問う肢。
    → 公権力代理による登記の特例と、通常必要な本人確認情報の扱いを理解しているかを見る肢。
  • :表題部所有者と登記名義人が同一である土地同士の合筆を認めるかを問う肢。
    → 合筆登記の要件として、所有関係と表示上の所有者の整合性を理解しているかを確認。
  • :地役権が設定されている土地と、地役権のない土地を合筆する際に、地役権の設定情報が重要かを問う肢。
    → 地役権・権利関係がある土地を合筆するときの添付情報要件や権利関係の整理を理解しているかを試す肢。

→ 第9問は、「合筆」という比較的単純そうに見える登記手続きでも、持分・地目・権利関係など、多くの要素が絡むため、それらを整理できるかを問う良問だと思う。

第10問(地役権図面)—肢ごとのポイント

:書面提出の場合、誰が署名押印する必要があるかの基本ルールを押さえているかを見る肢。

:地役権図面の縮尺が地積測量図と同じでなければならないかという細かな要件の理解を確認する肢。

:既存の図面がある場合に、分筆後も新しい図面が必要かどうかの判断力を問う肢。

:新たな地役権図面を添付すると従前の図面が閉鎖されるという図面管理の仕組みの理解を確認する肢。

:地役権図面に要役地の所在を書く必要があるかという、図面記載事項の基礎を問う肢。


第11問(登記の代位申請)—肢ごとのポイント

:附属建物の権利移転後に代位申請が可能かどうか、代位の対象範囲を理解しているか問う肢。

:売買に先立つ合筆を買主が代位申請できるか、合筆と代位の関係を整理できているかを問う肢。

:区分建物の表題登記を最終買主が代位申請できるか、原始取得者の義務との関係を理解しているかを確認する肢。

:地役権設定者が分筆まで代位して行えるか、地役権と分筆の権限関係を理解しているかを見る肢。

:共有建物で一部共有者が応じない場合、ほかの共有者が代位申請できるか、共有者間の権利義務の理解を問う肢。


第12問(建物の認定)—肢ごとのポイント

:駅ホーム内の売店が建物として認められる条件(定着性・外気遮断など)を理解しているかを問う肢。

:サイロのような特殊構造物が建物となるか、用途・構造・定着性を総合判断する力を見る肢。

:廃車車両を固定して店舗利用する場合の建物性の判断ができるかを問う肢。

:可動式ドームを含む大型施設のどこまでが建物と認められるか、建物性の線引きを確認する肢。

:石油タンクのような設備が建物となるか、建物と工作物の区分を理解しているかを見る肢。


全体として、図面・代位申請・建物認定といった実務的テーマを扱い、条文知識に加えて具体的事案の判断力まで求める構成になっている。

第13問(建物の所在) — 肢ごとの“確認されたい理解”

:行政区画の名称変更があったとき、建物の所在の登記変更が必要かどうか。
→ 所在事項の扱いと行政区画変更時の登記手続きの理解を確認する肢。

:規約敷地の地番を区分建物の所在にどう記録するか。
→ 区分建物と敷地権の関係、所在欄の記録ルールを理解しているかを問う肢。

:仮換地上の新築建物の所在としてどの地番を記載するか。
→ 仮換地と登記の地番記録の関係を理解しているかを見る肢。

:桟橋上の建物について「◯番地先」で記録する扱いが正しいか。
→ 特殊な立地条件における所在記録の方法を理解しているかを問う肢。

:附属建物が区分建物で同一一棟に属する場合、所在地番を申請内容とする必要があるか。
→ 附属建物の所在記録の要否を正しく判断できるかを確認する肢。


第14問(附属建物) — 肢ごとの“確認されたい理解”

:近接していても効用が一体でなければ附属建物とできないか。
→ 主建物との一体性の判断基準の理解を問う肢。

:主建物と附属建物の合併登記で各階平面図が必要か。
→ 合併登記で求められる添付情報の理解を確認する肢。

:先取特権保存登記後に附属建物が完成した場合、表題部変更登記が必要か。
→ 先取特権と表示登記の関係、登記義務の理解を問う肢。

:主建物と附属建物の新築日が同一なら、附属建物の新築日を申請内容に書かなくてよいか。
→ 表題登記の記載事項の判断力を確認する肢。

:附属建物新築時に変更後の建物図面が必要かどうか。
→ 図面添付が必要となるケースの正確な理解を問う肢。


第15問(建物の表示に関する登記) — 肢ごとの“確認されたい理解”

:滅失登記時に構造・床面積を申請情報に含める必要があるか。
→ 滅失登記の申請情報として何が必要かを理解しているか確認する肢。

:表題部所有者の氏名変更の登記原因をどう表すか。
→ 氏名変更に関する登記原因の知識を問う肢。

:誤って表題部所有者にされた者が更正登記を申請できるか。
→ 更正登記の申請主体の正しい理解を確認する肢。

:上下に区分された建物の専有部分の構造欄に屋根の種類が記録されるか。
→ 区分建物の表示項目の記録方法の理解を試す肢。

:共用部分の更正登記を共有者全員で申請する必要があるか。
→ 共有建物の登記申請の要件を理解しているかを見る肢。


第16問(建物の分割・合併) — 肢ごとの“確認されたい理解”

:建物合併登記で印鑑証明が必要かどうか。
→ 合併登記と申請人確認の基本を理解しているかを問う肢。

:双方に仮登記がある建物を合併できるかどうか。
→ 仮登記が合併に与える影響を理解しているかを見る肢。

:共用部分である建物同士を附属建物として合併できるか。
→ 共用部分と合併登記の制限を把握しているかを問う肢。

:中間部分を取り壊して2棟にした場合、表示変更と分割登記を一括申請できるか。
→ 分割・表示変更の申請方法の理解を確認する肢。

:抵当権付き建物を分割する際、抵当権者承諾で全建物の抵当権が消滅するか。
→ 建物分割と抵当権の処理の関係を理解しているかを問う肢。

第17問(建物の滅失の登記)

:抵当権が付いていても滅失登記が妨げられるわけではない、という基本理解を問う肢。

:相続後の滅失登記では「誰が申請できるか」「いつ所有権移転が必要か」という申請主体の理解を確認する肢。

:区分建物でも“一棟全体の滅失”は一人の区分所有者で申請可能という制度の仕組みを理解しているかを問う肢。

:仮登記名義人が滅失登記を行えるかという、仮登記と表示登記の関係を理解させる肢。

:物理的に消滅した建物は必ず滅失登記が必要、という登記制度の根本を理解しているかを問う肢。


第18問(区分建物の登記)

:法定敷地となった土地を別建物の敷地権にできないという、敷地権の排他性を理解させる肢。

:区分建物の表題登記は“一棟分まとめて申請”が原則という基本ルールを確認する肢。

:敷地権付き建物の滅失後に、敷地権がどう扱われるかという権利関係の変化を理解させる肢。

:区分建物の一部滅失と残存部分の表題部変更の関係という、申請の結び付きの理解を問う肢。

:一棟建物の床面積変更登記と、各区分所有者の申請義務の範囲を理解できているかを確認する肢。


第19問(筆界特定)

:隣接形態(点接触など)が筆界特定の対象になり得るかという申請要件の理解を問う肢。

:表題登記がない土地で筆界特定をする場合、所有権証明が必要になるという基本を確認する肢。

:時効取得者の申請資格と隣接関係の有無という、筆界特定の対象範囲を理解させる肢。

:登記のない土地(道路・水路)同士が筆界特定の対象になるかという制度範囲を問う肢。

:筆界について訴訟がある場合、筆界特定申請ができないという手続の排他性を理解させる肢。


第20問(土地家屋調査士・調査士法人)

:調査士が依頼を拒否できる条件(正当事由など)を理解しているかを問う肢。

:調査士法人設立時の登録申請は法務局経由という、手続の流れを理解させる肢。

:守秘義務は「正当事由があっても漏らせない」という職業倫理の重要点を確認する肢。

:測量業務を補助者に扱わせる条件(やむを得ない事由など)を理解させる肢。

:調査士法人は二人以上の社員が必要という、法人制度の基本要件を確認する肢。

過去問をコツコツと解き続けることが大切ですね。

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