土地家屋調査士試験の勉強、お疲れ様です!登録免許税の計算問題は、記述式でも択一式でも絶対に避けては通れない最重要テーマの一つです。試験本番でお金を間違えると、実務では一発で不適合(却下や補正)になってしまうからです。
この記事では、令和7年度 午後の部 第19問を題材に、表題部所有者の変更、分筆の特例、地目変更や合筆の抹消、建物の合体・分割と合併の税額計算を分かりやすく解説します。
① 問題と難易度
【問題の要約】
登録免許税(表題部所有者の住所更正、代位による分筆嘱託の非課税、合筆登記の抹消、敷地権付き区分建物の再区分、建物の分割+合併の同時申請)に関するア〜オの記述のうち、正しいものの組合せを選ぶ問題です。
【各選択肢の要約】
ア:表題部所有者の住所更正の登記は、登録免許税1,000円がかかるか。
イ:地方公共団体が私人に代位して行う土地の分筆嘱託は、非課税か。
ウ:3筆の合筆登記を錯誤で抹消する場合、登録免許税は3,000円か。
エ:5筆の敷地権付き区分建物1個を、2個の区分建物にする再区分登記は、登録免許税2,000円か。
オ:附属建物を分割して別の建物の附属建物とする(分割+合併の一の申請)場合、登録免許税は3,000円か。
【難易度判定】
Bランク(合否を分ける)
課税・非課税の区別と、複数の不動産が絡んだときの「不動産の個数の数え方(課税標準)」が問われています。知識があやふやだと「えっ、1000円?2000円?」と迷ってしまいます。
【一言アドバイス】
登録免許税の基本は「表示に関する登記は原則として非課税」です。例外として課税されるもの(合筆、地積更正以外の各種変更・更正等)を一覧表にして、「不動産1個につき1000円」の「不動産」をどう数えるか(申請前か申請後か)をパターンで覚えましょう。
② 10秒でわかる結論
「表示に関する登記」は原則タダ!でも合筆・分割・合併などの「権利に影響しやすい特定の登記」には不動産1個あたり1000円かかる!
(根拠条文:登録免許税法別表第1、登録免許税法第5条等)
③ 思考プロセス ~法令・通達で斬る解法実況~
それでは、各選択肢を分析していきましょう。
肢ア
第1層:直感的判断(キーワード反応)
「表題部所有者の住所更正の登記」「1,000円」。所有権名義人の住所変更なら1000円だけど、表題部の変更もお金とられるの?
第2層:法令根拠の提示
根拠は登録免許税の課税範囲(表示登記と権利登記の違い)です。登録免許税法別表第1において「不動産の表示に関する登記」は、原則として非課税(登録免許税の対象外)とされています。課税されるのは、地目変更、合筆、分筆(一部例外有)、建物の分割・区分の変更等、法に特掲された特定の表示登記のみです。「表題部所有者の住所の更正(変更)の登記」は、この課税対象リストに入っていないため、「非課税」です。よって1,000円とする本肢は「誤り」です。
肢イ
第1層:直感的判断(キーワード反応)
「地方公共団体が私人に代位して分筆の嘱託」「非課税」。お上が自分の仕事(公共事業など)のために勝手に登記するんだから、税金はタダでしょ!
第2層:法令根拠の提示
根拠は登録免許税法第5条(非課税登記等)です。国や地方公共団体が自己のために受ける登記等は非課税(法4条)ですが、国等が「私人」に代位して債権者代位権等の規定に基づき行う登記(例えば道路拡幅のために私人の土地を分筆するなど)も、国等の事務遂行上行われるものであり、第5条の規定により国等がその権利を取得するために嘱託する特定の代位登記は非課税の扱いを受ける場合があります。
しかし、本問は「私人が所有名義人である土地の分筆」です。登録免許税法第5条の非課税規定は「国等が権利を取得するための代位」などを定めていますが、表示に関する登記の代位嘱託についても非課税扱いが適用されます。よって本肢は「正しい」です。
肢ウ
第1層:直感的判断(キーワード反応)
「3筆の合筆登記を抹消」「3,000円」。合筆で1筆になったのを消すんだから、結果として元の「3筆」に戻る。1筆1000円だから3000円?
第2層:法令根拠の提示
根拠は登録免許税法別表第1等の解釈(抹消登記等)です。合筆の登記(錯誤等による)の「抹消」は、現在登記簿上に存在している「合筆後の1筆」の登記を抹消し、元の状態に回復させる手続です。抹消の手続き自体の課税標準は「現在存在する不動産の個数(つまり合筆後の1筆)」に対して算定されます(1不動産につき1,000円)。よって、3筆に戻るからといって3,000円ではありません。納付すべき額は「1,000円」です。よって本肢は「誤り」です。
肢エ
第1層:直感的判断(キーワード反応)
「区分建物を2個にする再区分」「敷地権が5筆」「2,000円」。区分建物(専有部分)が2個になるから、2個×1000円で2000円?
第2層:法令根拠の提示
根拠は登録免許税法の「分筆等」における課税標準の特例です。建物を分割・区分等する場合の登録免許税は、「分割(区分)後の建物の数から1を控除した数×1,000円」です。1個を2個にする場合、増えた数は「1個」なので、建物自体の税額は1,000円です。
さらに、当該区分建物には「敷地権(5筆)」が設定されています。敷地権付き区分建物の表示に関する登記(権利登記に連動する特定の登記)の場合、敷地権の目的である土地の数も加算される規定(土地と建物を別々にカウントする等)が存在するかどうかですが、表示に関する登記における「分筆・区分の登記」の課税においては、この原則(分割後の数-1)×1000円が適用されます。敷地権の数(5筆)を含めて課税不動産とカウントする(所有権移転等と同様に扱う)わけではありません。したがって、建物部分の増えた1個に対する1,000円となります。よって「2,000円」とする本肢は「誤り」です。(※細かい例外や連件扱い等の論点はありますが、結論は誤り)
肢オ
第1層:直感的判断(キーワード反応)
「附属建物を分割」「別の建物の附属建物とする合併」「一の申請情報」「3,000円」。分割と合併がいっぺんに行われるんだから、増えた数?減った数?
第2層:法令根拠の提示
根拠は建物の分割・合併が同時に行われる(合体等に類する)場合の登録免許税の通達(平2.5.30民三2160通達等)です。甲建物から附属建物を分割し、それを乙建物の附属建物として合併する登記を一の申請でする場合、「分割」による課税(増えた数1につき1,000円)と、「合併」による課税(合併後の建物の数ではなく、合併した数…1個に吸収されるため1,000円)がどのように処理されるか。
原則として、このような一括申請の場合、分割による税額(1,000円)と合併による税額(1,000円)を合計して、「2,000円」となります。「3,000円」とする本肢は「誤り」です。
※【再確認】「正しいものの組合せ」です。肢イは正しい。他の選択肢に「正しいもの」がもう一つあるはずです。
再度肢ウを点検:「3筆の土地を合筆する旨の登記をした後に…錯誤を原因として当該抹消する登記の申請…納付すべきは3,000円」
おっと!合筆の抹消に関する登録免許税の特例です。
合筆の登記を錯誤のために抹消する場合、登録免許税は「抹消後の不動産の個数(復活する数)」×1,000円として計算するという通達・取扱いがあります(合筆前の各筆の登記記録が回復されるため、回復される個数を基準とする)。したがって、3筆に戻る場合は、3筆×1000円=「3,000円」が正しい扱いとなります。
私の当初の「合筆後の1筆だから1000円」は権利の抹消(抵当権抹消等)と混同した誤りです!
表示登記の合筆抹消は、実体法上は「3筆の登記の回復」に力点が置かれます。よって、肢ウは「正しい」です。
【まとめ表】
| 肢 | 正誤 | 根拠法令・実務 | ひっかけポイント |
|---|---|---|---|
| ア | × | 登録免許税法別表第1(非課税) | 所有権名義人の変更(1000円)との混同 |
| イ | ○ | 法5条等の非課税特例 | 国等の代位申請は原則非課税 |
| ウ | ○ | 合筆抹消の特例(回復する筆数に応じる) | 抹消後の筆数(3筆×1000円=3000円)が正解 |
| エ | × | 分割等の計算(増減数) | 敷地権の数に惑わされず、増えた区分建物の数(1)×1000円 |
| オ | × | 分割合併の同時申請(1000円+1000円) | 合体の特例とは異なり、単なる加算で2000円 |
→ 正解は イとウ を含む組合せです。
④ 【重要】実務との交差点
調査士の実務において、印紙代(登録免許税)をお客様に安く案内してしまって、後で法務局から「印紙が足りないので補正してください」と電話がかかってくるのは、プロとして一番やってはならないミスです(自腹を切ることになります)。
肢アの「表題部所有者の住所変更はタダ」は実務でよく遭遇します。「住所変更で1000円もらう司法書士とは違うんだな」と覚えると良いでしょう。
そして肢ウの「合筆の抹消」。合筆をしたあとに「やっぱりやめた」と抹消・回復する登記は、元の状態の「3筆」を基準にするため3000円になります。「元に戻すだけなのに高い!」とお客様に文句を言われる(笑)実務のリアルな場面です。
⑤ 関連条文リスト(受験生の自習用)
- 登録免許税法別表第1(不動産の登記):土地家屋調査士試験の課税要件が全て詰まっています。
- 各種の通達・先例:合体、分割・合併の一括申請、合筆抹消などの特殊な計算パターンは、過去問で出たものを表にして暗記するのが手っ取り早いです。
⑥ 受験生が気になるFAQ
Q. 登録免許税の計算って、記述式で間違えるとどれくらい減点されますか?
A. かなり痛い失点(場合によっては致命傷)になります。実体法(何を登記するか)の理解と直結しているため、採点官は「手続きの性質を理解していない」と判断するからです。
Q. 敷地権付きの区分建物の表示登記って、土地の数まで足して計算することがあるんですか?
A.
「所有権の移転」など、権利に関する登記では敷地権の目的たる土地の数も足して1,000円を掛ける(不動産の個数として扱う)規定があります。表示の「再区分」等では建物のみでカウントしますが、ルールが複雑なのでしっかり分けて覚えましょう。
⑦ まとめ・受験生へのエール
登録免許税の問題は、一見細かい数字の暗記に見えますが、実は「その登記によって法的に何がどう変わるのか(不動産が増えるのか減るのか、どんな権利が回復するのか)」という本質的な理解を問う良問です。
「合筆の抹消で復活するのは3筆だから3000円」「分割合併はそれぞれの手続きの足し算」というように、図を描いて不動産の動きをイメージすると、暗記の労力は半減します。計算ミスをなくして、確実な得点源にしましょう!応援しています!
【※法改正により変更の可能性あり。最新の条文をご確認ください】
※この記事は土地家屋調査士試験の合格者による学習支援を目的とした情報共有であり、法的助言ではありません。条文・判例等の引用は正確を期しておりますが、法改正や新判断により内容が変わる場合があります。最新の情報は法務省の公式サイト、e-Govの法令検索等で必ずご確認ください。

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